リピュアBパート・咲耶 『ホーリーウェディング』 に、我々が感動することは許されない
ほんとうは もう少し一緒にいたかった
Sister Princess Re pure Bパート。



当時のシスプリファンに、これ以上ない賛辞を受けた作品。神作画や演出の巧、シスプリ音楽の最高峰とも言える故・岡崎律子氏による楽曲提供など、作品自体を褒めればキリがないこともさることながら、先に放映された無印アニメが「ウニメ」と揶揄されるほどの出来であったことの反響や、Aパートにあたるストーリーズに少なからぬツッコミどころがあったことも影響し、かえって評価を高めることとなったのではないでしょうか。

……まぁ、そんな具合の、概ね好意的な印象を、先達にあたる当時のシスプリサイト様方の過去ログから読み取りました。

所有しているキャラクターズのDVDボックスは何度見返したかわかりませんが、簡単な評価をしますと、原作の忠実な再現度はもとより、クオリティは今の私が見返しても文句なし。
なかんずく、第12話で放映された咲耶の『ホーリーウェディング』は、前述した高い評価の中でも頭一つ抜きん出たものであり、当時の全国にあまねく存在するお兄様の涙を誘い、その涙の量は同じくBパートの花穂が全国のお兄ちゃまから搾り取った精液の量に勝るとも劣らぬといったところ。
しかし、「ホーリーウェディングショック」の威力は予想外に大きく、放送直後は立ち直れなくなってしまったお兄様が続出。そのため、この一話を受け止めるのに必死で、作品について深く語ることができた方はそれほど多くありませんでした。

ならば翌年の咲耶誕生日に、積もりに積もった咲耶語りを……といきたいところですが、その時には既にシスプリの連載が終了し、シスプリファン・シスプリサイトの母数が減少してしまったため、この一件について、正面から取っ組み合いをした意見というのは、かなり希少なものとなってしまいました。
そこで、本日、咲耶の誕生日を記念いたしまして、『ホーリーウェディング』が、どういった作品であったのかを、不肖このワタクシ、桜木がこの場で解説いたしたいと思います。

先に述べた通り、Re pure の評価が高かったことの理由の一つとして、「原作に忠実であった」ことが挙げられます。そして、私はメディアミックス作品(ラジオドラマ・ドラマCD・アニメ・ゲームetc.)が原作のエピソードを引っ張って来た時には、決まって元となった原典を片手に視聴を行うことにしております。最近だとハルヒのアニメなんかは、文庫との差異を探しながら見ていたりしました。
よって、今回のホーリーウェディングは、咲耶のキャラクターコレクション2話、「ホーリーウェディング」を逐一持ち出しながら、同時に私の解釈を付けていく形で進めていくことにします。

では早速、この佳き夜を、最愛の妹咲耶とともに過ごすことにしましょう。
たったひとりの人が欲しいだけ
まずは原典であるところのキャラコレ『ホーリーウェディング』と、今回の主題となるアニメ版『ホーリーウェディング』の大まかな流れについて。
原作が咲耶一人の主観のみの話になっているのに対し、アニメ版は「咲耶」と「幼い頃の咲耶」という、時間を隔てた二人の「咲耶」が交互に登場します。まぁ、この辺は説明するまでもないように思えますが、一応まとめておきます。


◇原作
 ・語り手は、友人との先約を果たしにいっている兄に対し、不満を持つ咲耶
 ・教会のバザーへと寄り道する
 ・バザーで結婚式を見かける
 ・結婚式で投げられたブーケに手が届かなかった
 ・自宅に戻った咲耶は夜、先ほど見た花嫁を模した衣装を身に付ける
 ・しかし、将来兄の横でこの衣装を纏うことになるのは別の女性であることを想い、悲嘆に暮れる

◇アニメ版・幼い頃の(夏の)咲耶
 ・語り手は、友人との先約を果たしにいっている兄に対し、不満を持つ咲耶
 ・教会のバザーへと寄り道する
 ・バザーで結婚式を見かける
 ・結婚式で投げられたブーケに手が届かなかった
 ・式後、フラワーシャワーの残る教会の中で、兄との将来を夢見る

◇アニメ版・(冬の)咲耶
 ・兄と結ばれないことを理解しており、町をさまよう咲耶
 ・既に引き払われ、無人となった教会へとたどり着く
 ・教会には昔の、人が集まり、楽しかった頃の面影はない
 ・教会内で、一人誓いの言葉を紡ぐ
 ・兄と共には歩めない将来を思い涙を流す


アニメ版ホーリーウェディングは、ただ無心に兄を慕い、将来への不安など持ち得なかった幼い頃の咲耶を語り手として、「兄妹」という現実を知ってしまった咲耶を描くことで、悲壮感を一層際立たせました。
また、シスプリらしい、比較的明るいテイストを前面に押し出されたホーリーウェデング以前のリピュアとは対照的に描かれ、「シスプリの影の部分」(兄妹故の悲劇)を表現したことに、そのシスプリメディアミックス作品としてのクオリティの高さを認められています。



……本当に?

本当に、そうでしょうか。


私の解釈は違います。この物語は、そんな悲恋の切なさを描いているだけではない。とても許容できるものではない。
私は、Re pure Bパートで描かれたホーリーウェディングとは、

『兄以外の人物と結ばれた咲耶が思い返している過去』

であると解釈しています。
以下、表記についての注意ですが、

・幼い頃の咲耶→幼い頃の咲耶
・兄との関係に悩む、(我々が普段「咲耶」としているところの)咲耶→過去の咲耶
・兄以外の人物との結婚式に臨む咲耶→今の咲耶

としております。
では、ホーリーウェディングから洗い出した論拠を、作品に登場した順に列挙していきます。


◇梢について

まずはたびたび提示される梢について。この梢は、

①冒頭の冬を迎える前の梢
②夏の青々とした葉をしげらす梢
③冬の寒さに葉を落とした梢
④ラストの新芽が芽生えた梢

の四つのパターンがあります。
これらはそれぞれ、

①……過去の咲耶
②……幼い頃の咲耶
③……過去の咲耶
④……今の咲耶

を象徴しているものと捉えています。これは単なる表象ですので、あまり気にする必要はありません。


◇付け加えられた文章

アニメ版では、咲耶の「語り」の部分に若干の修正が見られます。ですが気になるのは、兄が友人との約束を優先させたことに対して、咲耶が憤りを述べた後の大きな加筆。

なんてね。
お兄様……? 今日ぐらいは許してあげてもいいわ。お友達とのお付き合いも大切よね。
その代わり、今度のデートは丸ごと私のために一日空けてもらうんだから! 離れていても、私とお兄様は運命の赤い糸で結ばれているのよ。

『赤いマフラー』
リピュアでの咲耶を語る上で外せないのが、この赤いマフラーというパーツ。Aパート10話では咲耶が兄へのプレゼントとして用意し、メインテーマともなっており、この時の兄の態度が全く不可解であったことは記憶に……新しくはないな、周知の事実です。
「赤いマフラー」にこめられた意味ですが、

・運命の赤い糸
・二人を結ぶ血縁の赤

の、極めて対照的な二点が想起されます。
特に『血縁の赤』は、離れようとも二人を結ぶものでありながら、同時に二人が結ばれる上で最大の障害となるものである。このことを理解しているのとただ「運命の赤い糸」とだけ受け止めるのとでは、ずっと重みが違ってくる。


◇バザー

雑多な売り物=数多い兄との思い出であり、そのバザーが引き払われたことは、兄との想い出が遠く霞んでしまったことを暗示している。
こんな日=結婚式当日であるにもかかわらず、思い出されるのは兄との思い出。となれば、「こんな日に限っていいものがない」という咲耶の発言は、至極もっともな物に聞こえてはこないだろうか。


◇幻の結婚式

目ぼしい掘り出し物がなく、帰路に着こうとした幼い頃の咲耶。が、そこで鐘の音を聞き、結婚式が挙げられていることに気付く。
しかし、過去の咲耶がいる教会は既に静謐さ以外に何もない。では、何が咲耶を振り向かせたのかというと、前項に挙げた思い出に、今の咲耶が結婚式当日に浸っていたところを、名前を呼ばれ急に現実へと引き戻されたことを示唆しているようには見えないだろうか。
何より、ここで描かれている花嫁は、どう見ても咲耶である。
そして、幼い頃の咲耶が夢見る、「兄と自分が添い遂げる」ことへの憧憬が、「ブーケに届かなかった手」という表現で残酷なまでに描写されている。


◇一人の式場

『あなたを永遠に愛することを誓います』
そう呟き、涙を流す咲耶。
女の子が口にする中で、最も幸福なこの言葉を涙ながらに口に出すとは、永遠に愛することになる「あなた」が、本当に愛したい相手以外であったことに他ならない。


◇縛られたマリア像

慈愛の象徴であるマリア像が、ここでは縄で雁字搦めにされている。シスプリ世界での慈愛=家族愛を最も体現していた兄からの慈愛を忘れようとし、封印しようとしたことを表してのことであろう。


◇笑ったのは

そしてED直前。「兄と共にありたい」と、ただそれだけのことを願う咲耶。ブラックアウトと同時に画面に映し出されたのは、「赤いマフラーを巻いた幼い頃の咲耶」という、『どちらでもない』咲耶が笑っている姿であった。
どちらでもない咲耶、つまり、兄以外の人物と結ばれた「今の咲耶」のことである。


◇最後の文章について

『Thinking of you in this special day.』
ここまで書いた通り、咲耶が考えるのは兄のことだけです。そして、女の子にとっての「special day(=特別な日)」というのは、ウェディング当日以外にはありません。しかし、兄は咲耶の結婚相手たりえない。
よって、このホーリーウェデングという話全体が、
『兄以外の人物と結ばれた咲耶が、式当日に思い返している過去』
ということになるのです。
明日などいらない 今 時を止めて
お分かりいただけたでしょうか。Re pure Bパートで描かれたホーリーウェディングを肯定することは、兄以外の人物と咲耶が結ばれてしまう将来を肯定してしまうことになるのです。

私たちお兄様が、この一作に対しては憤慨することこそあれ、「これがシスプリなのだ」という立場を取ることは、決して許されないことなのです。
今 このRomanceに飛びこんできて

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by sakuragi_takashi | 2007-12-20 22:34
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